Lost and Found/クリ
記憶を押しつけられながら 地下鉄の階段を下るとき
膝のあたりが キポタン キポタン と鳴り続ける
悪意のない ただ無知ゆえの無表情が過ぎるたび
音は止まる 意地悪く
伝言板に 僕への事務的な連絡
延ばしのばしにした明日から 「サキニイク」と
残り香のようにまといつくものは 何だろう
ヒビが入って水がすべて漏れ出してしまった水筒を
いつまでも宝のように持ち歩く 子供
夢を見た
茶色のバッグを床に置いて君が言った
「借りていたものを みんな持ってきたの」
あげたものはあるけれど 何か貸していたろうか?
遺失物管理所 連絡を受けたことを告げる
バッグの中身をひ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)