涙零れるほどに/桜 歩美
愛しているよと素直に言える今が幸せ
きっときっと
いつか君が大きくなっていくにつれ
私との会話は減っていき
「愛してるよ」なんて言って
抱きしめることは出来なくなるんだよね
君の超音波写真を大切にアルバムに貼ってある
まだ君がちっちゃな種だった頃の写真
でもちゃんと人間の形をしていて
おかあさんはとても神秘的なものを感じたよ
確かに君とおかあさんはひとつだった
その現実はこの胸に宿る愛という形となって
永遠に残っていく
君はもうおかあさんのお腹にいたことを
忘れてしまっているけれど
君がおかあさんを愛していることが
おかあさんが君を愛していることが
君がおかあさんのお腹にいた証なんだよ
どうか口に出し行動に出来なくなっても
いつも心の片隅に今のままの愛を
持ち続けておいてください
母はいつも君が胸にあります
君がこの母のもとを離れていっても
ずっとずっと
この母の愛の零れる涙の雫が
君に伝わるでしょうか
戻る 編 削 Point(4)