(窓)(部屋)/葉leaf
、傷ひとつない水晶板越しに、色づいては
焼けてゆく外庭をながめている。水の刃のよ
うな視覚の反作用は内なる沃土をえぐるので、
僕はまばたきをして耐えている。
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部屋は外部をあこがれている。蓄熱した川底
から風化した街へと、風景は切り替わってゆ
く。魚と水とは混じりあい、激しく燃えたあ
とのかがやく灰から聖堂が彫塑される。……
僕は夢のつぶてを頬にあとづけて、部屋の草
花の葉おもてに郷愁をきざみこむ。だが壁に
はめ込まれた記憶をいくら洗っても故郷はな
い。故郷は林へと遁れてしまったのだ。
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や
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