(窓)(部屋)/葉leaf
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昔日の思想は僕の手に形をあたえる。指先を
くるむほとびた皮膜に沙漠のイマージュをな
がしこむと、僕の手指は草の葉をつまむこと
ができる。内臓の液化してゆく音は部屋中に
うかぶ呼気の表面で散乱して、僕の足首にふ
れる。……僕の額には忘れ去られた海があり、
その最深部では羽をひろげた始祖鳥が、空に
向けて発光している。
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窓にはどんな血も流れ込まない。窓はただ、
うつりゆく光の色相面にみずからを連ねてゆ
くだけだ。みなぎった正方形を確認するだけ
だ。……僕は大理石の動かない壁にかこまれ
て、傷
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