汽水/
落合朱美
川縁の草いきれの中を
ひた走った記憶は
あるいは夢かもしれず
はじめは
ひとすじの流れにすぎなかった
けれど運命は
生まれる前から決められていた
旅を重ねるごとに
強さを身につけて生きてきたのに
大海原を目の前にして
戸惑っている
打ち迫る波に
立ち向かうことを怖れては
押し戻されて
曖昧な流れの中に身を委ねている
川縁の草いきれの中を
ひた走った記憶は
夢などではなくて
確かに私は叫んだのだった
私も
ともに海へ還るのだと
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