空蝉/しらいし いちみ 
 
湿った風が吹く朝に
君は薄い火を灯した幹から両手を離す


種の保存の掟は果たせたのだろうか
君の生き方は純粋で幸せだったのだろうか
最後は雲の切れ目から青空が見えたのだろうか


残り蝉の連歌は君に届かない
公園で遊ぶ子等の声も聞こえない


凝視した目の中を秋雨前線は通過して行く
瞳は黒から青へ変わり
地球を背に宙(そら)を腕に抱え込んで塵へ帰る


体の透けた子蟹が傍らを横切って行く
また夏の空気は少し冷えて来た







戻る   Point(15)