忘れんぼうの水族館/初代ドリンク嬢
「薬を飲み忘れたわ!帰らないと」
マンボウを見に
水族館へ行こうと
誘ったのは彼女の方だったのに
家を出てすぐ言った
「どこが悪いの?」
「知らないわ、生まれてからずっと飲んでるのよ」
「飲まないとどうなるの?」
「知らないわ、飲み忘れたことがないから
でも、きっと大変なことになるのよ」
「そう、じゃあ、急いで戻らなくちゃ」
「そうよ、急いで戻らなくちゃ」
大急ぎで家に帰ると
靴を脱ぎっぱなしにして
奥へ入っていった
「薬を飲むところは絶対に見ないでね」
もちろん、
僕も後を追って
彼女が薬を飲むところを
そっと覗いた
彼女
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)