東京は/鈴木もとこ
職安から帰る道のり
駅からの道を歩く
ぬるい風が襟元をかすめる
まだ6月なのに27度
北国仕様の体には
蒸し暑く感じる
むっとするアスファルトの匂い
駅へ向かう自転車の群れ
甘い花の香り
ハノイの夕暮れを思い出す
狭い路地に
木々が覆い被さるように濃く葉を茂らせ
昨日まで無かった草が
フェンスに立ち上る
そのスピード!
ツバメのヒナ
虻の羽音
夏に突き進む
締め切った部屋の窓を開け放つ
鈍色の空が一瞬呼吸し
真っ直ぐに落ちてきた
泡立つ歩道
隣家の屋根は白くけぶり
車を叩きつける
走り去る子供
夕立だ
みるみるアスファルトは川になり
駐車場は池になる
排水溝に吸い込まれる音
そのエネルギー!
今まで暮らしていた北国には無い
はっきりとした雨
前が見えないくらいに激しく
あっけなく降り止む
まるでスコール
ハ・ロン湾に
メコンに
アオザイの肩に
降るように
東京はアジアだ!
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