ベリーちゃん/大覚アキラ
 
観測史上最大級の台風が上陸した日の夕方
未確認の大型生物の屍骸が
四国のとある漁村の浜辺に流れ着いた

地元漁協の連絡を受けて
ある大学の海洋生物学の調査チームが到着したのは
発見から14時間後で
辺りはすでに夜が明けつつあった

全長30メートル近いその生物は
バージェス頁岩生物にも似た奇妙な姿をしており
正確に数えることのできない無数の触手をもち
頭部には直径80センチほどの巨大な眼が
確認できるだけで12個もついていた

腐乱したその屍骸からは
熟した野苺のような甘い匂いが立ち上り
夜が明けて日光を浴び始めると
その匂いは一層強烈になり
約3キロ風下の村
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