衣替え/A道化
 





夏物の花柄が薫ったのは
パタパタと羽ばたくような助走の後
遊具を飛び越える、わたしの脚の発熱を
自由のきく緩さで包んで縛って守っていたから。
少女が、少女であれば少女あるほど
花柄は枯れることなくあどけなく土に汚れてしまう、と
誰かが気が付いたところで、何にもなりはしませんよ
ひとつの意味でしか赤くない夕刻を
あらゆる意味で赤いと信じ込んでいる少女でも、結局
脱ぐな、と誰かが言ったところで
脱ぎ去れ、と誰かが言う結果と何にも変わりはしません
だから、放っておいてちょうだい
どうか、何も言わないでちょうだい
わたし以外の何者かが
枯れることのない花柄を造作無く火にくべる頃には
脱ぎ捨てた当の少女は既に跡形もなく行方をくらましており
その跡地にただ取り残されたわたしは
悲しまず何も思い出さず身仕舞いを済ませました。



2005.8.24.
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