僕と息子のあいつのためのレクイエム/みもる
 
たまには外に出て
散歩でもしようと
ぶらぶら街中を一人歩いてみた

毎日の張り詰めた空気が
あまりの快晴にどうでもよくなり
胸のあたりがくすぐったい

通りかかった音楽教室から
見覚えのある声と後姿
懐かしいピアノの音

頭痛と共に
体中にもどかしい電流が一閃

思わず僕は19歳の幻を追いかける

でもやっぱり
その人は
あいつじゃなくて



あのころ
何もしていなかった僕も

今は仕事につき
奇跡的に結婚もし
息子も一人

毎日やってられないとは思うに思うが
なんとかやっている
なんとかやっていてしまう

今の僕を見たら

[次のページ]
戻る   Point(2)