テレヴィジョン/大覚アキラ
真っ黒焦げの夜の真ん中に立ち尽くして
おれは一本の棒みたいになって
真っ直ぐに電波を受信する
世界のどこかにある高い塔のてっぺんで
一匹の猿がヘブライ語で愛を囁いていて
それが24時間発信され続けている
ウォーターベッドの上の彼女は
もうずいぶん前にテレビになってしまっていて
おれも早くテレビにならないとヤバイ
なのにいつまで経っても
テレビみたいなものになるのが精一杯で
仕方なくアンテナになることにした
映像が届き始める
最初は灰色のサンドストーム
やがて見覚えのある暗い路が浮かび上がって
その薄暗い裏通りは
靴音が響くように特殊な舗装が施してあって
誰もが高らかに靴音を響かせて歩く
計算されつくした音響効果
渓谷のようなビルの狭間に
ハードボイルドな靴音が冷たく反響して
チャンネルが間違ってるわよ
ウォーターベッドの上の彼女だったテレビから
ヒステリックな電波が逆流してきて
おれは夜の真ん中で炎上げて燃える
こんな真っ黒焦げのアンテナなんて
これじゃあまるで避雷針だ
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