あれるぎー/Six
悲しいことの、その理由は
こうしている間にも
いくらでも増えてゆく
昆虫の卵のように
冷たく白く光る
小さなつぶつぶとなって
いくらでも増えてゆく
その卵をぷつんと割ると
苦い涙のような液体が
にじみ出てくる、
というのは嘘だ
へんな怪物が孵化する
などということも
恐らく絶対に
ないのだ
ただただ、
灰色にかすんだ空気が
ため息をもらすように
空中に飛び出して
消える
干からびた卵の殻は
空中から鼻の奥に吸い込まれ
そこの粘膜に張り付いて
ときどき涙をともなった鼻水が
つうと垂れてきて
こうしている間にも
悲しいことの、その理由が
いくらでも増えてゆく
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