(ほぼ私的日記)〈美術館〉『竹中英太郎記念館』 2005/08/12/白糸雅樹
 
と。私もそう思う。今、乱歩を読むと、ストーリーや人物造形の荒さがめだって退屈することがあるのだけれど、乱歩のおもしろさはきっとあの世界を創り出すところにあるので、それを目に見えるかたちにした挿画があると、ずいぶん違ったろう。それほど妄想を掻きたてられる絵なのだ。

 一階から二階の最初の部屋に上がっていった時に、私はぱっと、「新青年で有名だというけれど、この人の絵柄には乱歩より夢野久作のほうがより合っている気がする」と言ったのだが、奥の部屋の新青年時代の絵を見て、さらにそう思った。

 二階手前の部屋にある作品の何点かは、『戒厳令の夜』という映画で使用するために描かれた絵だという。このうち
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