上弦の月の下で/けんご
 
か細いわらの詩人が
明るい月の下
カバと話した

「僕の詩を読んでくれよ。
これが僕の他愛ないけれど、
たった一度の人生なんだ」

カバは当惑しながら読もうとするのだけれど
ちんぷんかんぷん
詩人に尋ねる

「俺、詩は分かんね。
それより腹が減ってるから
喰っていいか?」

と言うや否やカバは詩人を喰ってしまった

「ああ、君には繊細さが欠けてる。
後生だから僕の詩だけは残してくれ」

あんまり満腹にもならず
カバが嘯く


「カバに詩が必要などと
ついぞ聞いたことがない。
食べ物の方が大事に決まってるだろ」

詩人の詩が地面に散らばった
美しい上弦の月夜の出来事だったとさ





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