返歌集/恋月 ぴの
 
ドンと来るかひらり舞うのか


掌を合わすはまなすの空藍深く
    菩薩の慈恵永久に八千代に


なおのことダイダイをむく一房に
    香る仕草は頬に抱かれて


占えど一夜の恋と人は言い
    帯止めの艶解く手に添えて


君は言う戦のあとの夕暮れは
    浮世にうつす あかよりもあかく 


尾を振って街角巡る君ならば
    恋の行方も 愛の終わりも 


移りゆく雲のあしたは風まかせ
    白い綿毛に我が身託して 


たらちねの母のぬくもり安らげど
    ひさぐ瞼に涙ひとすじ


姥捨ての山は何処か問いぬれば
    渡るみそらに鐘は鳴るらん


舌先で君の吐息をなぞらえば
    ぬめる臥所に うなじは染まる


秋近し海をただよう水母来て
    涙をお拭きよ明日を詠おう 


秋近し寄せては返す月影に
    ただひたすらと君の名をよび


引く手にも優しき君の思ひ出は
    小舟に乗りて流るるままに



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