家族/捨て彦
も
近くの祭りに寄って
ひょっとこのお面を買ったんだ。
これが今日買ってきた
ほやほやのひょっとこだよ。
活きの良さそうな尖がった口が
とてもキュートだろう。
お前にもこの顔の素晴らしさを
教えてやりたいな。
お母さん。
和人。
私ももう
逃げたりしないよ。
このお面を
こうやって被って
お前たちにこれから
心の底から
ただいまと言うよ。
でも
今はもう少しだけ
このまま君たちの姿を
眺めさせてくれないか。
情けないわたしたちは
夕暮れに赤く染まっていよう。
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