月に照らされたビルの森/蒼木りん
あれは冬だったから
あの月とは違うけれど
1月10日のあの街の
あのビルの森の上に出ていた月と似ている
8月
今夜の朧月
明日
現世は終戦記念日だという
夏が折り返す
もうヒグラシが刹那い
孤女ではいけないと
他人は見るけれど
恋がしたくなる隙間に
こころを抑えてばかり
わたしには
トンネルを潜る世界があった
悔やまれるのは
すべてにやさしすぎたあなたで
時に流されたわたしが
そのこころを閉ざしたこと
月にこころを奪われることなく
先を行くあなたの後ろで
わたしは月を見つけて微笑む
あなたのこころを奪っていた
後ろ
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