月に照らされたビルの森/蒼木りん
後ろの正面
だぁれ
誰にでもあること
誰にでもできないこと
ふみだすこと
夢だけで終わること
あいまい
あまい
甘い曖昧
けれど
別れる時間は急きたてて
ホームに滑り込む前の
滑り込みのキスをして
あなたは泣いていた
あれから一度も着ていない
白いウールコート
時の隙間は
隙間でしかないと
ふたり
わかりきっているけれど
私はため息をつく
あなたは泣いていた
どうして
早く
冬が来ればいいと思う
素肌にあの白いコートを着て
あなたに逢いに行きたい
また
トンネルを抜けて
あの月に照らされたビルの森へ
戻る 編 削 Point(4)