The grasshoppers in the rain/佐々宝砂
んまり甘すぎるよ、アミ、
あんな目でサニを見ないでほしい。
サニはサニでミアを見ている。
そしてミアの盲いた目は、
誰も見ない。
きっと。
それにしてもひどい雨だ。
どこに行くべきか思いつかないぼくは草原を走る、
ぼくはサニみたいにたくましくない、
アミみたいに背が高くない、
ミアみたいに未来を見られるわけでもない、
ぼくは、ぼくは、ぼくは、
空が光った。
視界が白熱した。
落雷という言葉を思いだしたのは、
目覚めてからだ、
ぼくはつめたい膝に頭を乗せていた、
ぼくはお礼も言わずに飛び起きた、
つめたい膝の持ち主は、
白い髪に赤い目、
ぐっしょり濡れた服から透ける胸は、
ぼくと同じようにたいらだった。
あいつの名前はカイ、
でも名前なんてそんなに重要なことじゃない。
初出 蘭の会2005.8月例詩集
「カイとわたしの物語」の前日譚連作「カイとぼくらの物語」より
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