幻想の王国 あるいは 詩権神授説/佐々宝砂
1.白馬の王子(わたしの巻き毛のリケ)
颯爽と白馬に乗って駆けてくる
巻き毛の王子は
ぶざまな小男でやぶにらみ
しかし王子がパチン!と指を鳴らせば
王子の姿は誰よりうるわしく輝く
姫君は満面の笑みを浮かべて
美しい王子を出迎え
王子は美姫を得た幸福にとろけるだろう
さて 王子を待ちながら姫君は杖をひとふり
姫君の青ざめたあばた面は
たちまち傾城の美貌に早変わり
さよう そこは幻想の王国
さりとてそこに愛がないわけではなく
白馬の王子はそれなりに立派な男なのである
2.詩は血で書くものじゃないけれど
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