バーの悲しみ、とトリコロールの跡で/チャオ
 
シュした氷をグラスに入れる。

お客さんは喜んで帰っただろうか、と
日報に書いてみる。レジのお金が合わない。
財布から小銭を合わせる。

1時。外の街灯は消え始めている。
自分のために作ったお酒は
自分を充分に喜ばせただろうか、と
日記に書く。カレンダーの日付が合わない。
昨日、と今日を切り離す。

すべてのお客さんは、もう
今日、は昨日になっているのだろうかと
バーテンダーは思う。

小さな敷地にある、小さな門のある、小さな喜びを後にして
バーテンダーは首をかしげる。
トリコロール色のスーパーマーケット。

誰かが操る世界。いつかは誰かを操る世界。
トリコロール色のスパーマーケットで
地べたに腰を下ろしたバーテンダーは、
明日のお客さんを想像している。

明日も、誰かが、お酒を飲むらしい。

クラッシュアイスをもう少し
細かく出来たらいい、と
バーテンダーは手帳に書いた。
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