なくなりかた/nomica
静かに夜がふけていくね
なんだかもう何もかも見失って
眠る必要なんて無いのかもしれない
それとも明日覚めなくてもいいのかもしれない
森がざわざわとゆれる
あたし、この中にとけてしまいたいわ
湖の水面に映る大きくて紅い月
ゆっくりと弧を描いて影を作って
その影の中に あたしは朽ちていく
ぬるい世界を漂ってく
欲望の全部を脱ぎ捨てていく
表情の無い額にとくとく
時間の膜が積もっていく
静かに呼吸をしなくなってく
ただ深く濃く心臓だけ鳴らす
古木の水をくみ上げる音と共鳴する体液
湖のはじで砕けた世界が
睫の先から染み込んでくる
苔に水草に侵されていく体
あたしは流れている
すべてを捨てて太い幹のように
流れていく 湖底へ
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