ノート(Hollow)/木立 悟
 
はいない
涙を涙のとおりにひらいて
何度もとにもどしても
ひとりたりない
ひとりたりないのでした


生きなくてもいいのでした
それでも生きていたのでした
それは生きてきたのではなく
見える笑み 聞こえぬ笑み
見えぬ笑み 聞こえる笑み
そのときそのままの笑みに囲まれて


歩いているのでした
気がつくと
歩いているのでした
雨のなかを かたちが流れてしまっても
音は何度もひとりをひらき
ひとりをひとりにもどすのでした





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