真紅の鯨       (完成しない巻頭詩)/せんたく板
 
    真紅の鯨は大きな口を開け

    岩陰にじっとたたずむ稚魚など

    群青の空の途方もない背後の夜をあおぐ

    踵をかえすだけの過去は

    あまりに遠いので

    風が吹き抜けるのを待たずに

    君はくしゃみをした

    くちん

    えりす? そうなのだ

    君はえりすという

    純粋の域に奉られた女神

    ただのノスタルジアの虚像だとしても

    終わりすらなくとも

    胞子は、混じり合う青と紅の境界を漂う








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