雨の物語/藤倉けい
 
今朝から窓の外はずっと雨模様なんだ

雨の日の午後、きみは変にしんみりしてる

ぼんやりとあれこれ、いろいろ思いをめぐらしてる

雨は不思議だねってきみは言うんだ

そして 

喉が渇いたきみはジュースを買いに外へ出るんだ

ちょっとそこまでの道のり

ほんのわずかな

だけど 雨は思いのほか強くて

穴のあいたビニール傘を右手に持ったきみは

徐々に湿っていく体を感じてる

そして雨音に包まれ青く染まった静かな路地を一人歩いてると

まるで遠い旅にでも出てるかのように

感傷的になってるきみがいるんだ

きみはじっと前を見据えて歩いてるつもり

だけど

その瞳には遠い思い出が揺れている
 
そして

左手に硬貨を握り締めたまま

何台もの自販機を通り過ぎ

部屋はただ遠ざかっていくばかり・・・

肩を濡らして歩くきみ

もう二度と部屋には戻らないんだ・・・


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