聖夜のためのディミニッシュ・コード、失敗作ヴァリアント/佐々宝砂
歌い上げる、
そのソプラノ、
女のものではない、その、ソプラノ、
黴の生えたSPレコードから響いてくる、
否。それを歌っているのは、僕だ。
悪い夢にうなされているのか、
甘い夢に酔っているのか、
ひらひらとトリルを聴かせれば、
女は陶酔して叫ぶ。男は後で忍んでくる。
否。僕は、そんなこと、していない。
優雅で華やかなカデンツァなど、
この僕はきらいだ。
僕が愛したのは、僕が学んできたのは、
甘いだけの恋の歌なんかではない!
***
このあと続かなくなったので、失敗作なのでした。
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