あの子の お口/千月 話子
薄紫の和紙に 小さなお山のように盛られた氷砂糖を
壊さないように 天辺からそっと摘まんで
可愛らしい唇に つん と付けては
何となく冷たい感触を味わうのよ あの子は。
口溶けは 冷やかした水の塊り
向こうっ側が透けて見えるから
発音の丸い苔桃の実を置いてみて
「それは、きっと甘いのよ。」と舌先に暗示
もしも 想像と違っていても
ふぅ と息を吹きかければいいの
ふぅ とモヤが全てを消した 舌
陽炎がそのうち忍び込んで来て
ゆらゆらと 砂糖菓子揺れて 雪解ける
3粒を違う情景で食べて、それで
薄青のガラスケース越しに空を見たら
世界はきれいな 晴れ
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