乾いた雨男/HARD
 
彼はいるのだ
明るさ―この時期には場違いな―の中に
まるで透明で小さな箱に押し込まれたように
彼は縮こまっているのだ

ただ、昨年、一昨年、と
思い出せるだけのこの時期の思い出を
暗く、じめじめとした、けれど彼にとっては最高の思い出を

毎年、毎年、彼は別の女を抱く
黒髪、長髪、しっとりと潤った肌
   雨女
イメージ的な雨女

しかし、今年は違った

彼は選択を誤ったのだ
この女は……
まぶしすぎて顔がわからない
まぶしすぎて何もわからない
   晴れ女
影すら見えぬ晴れ女

彼の追想は止まる事を知らない
間に乾いたため息
「!」
「ため息まで乾いている」
ガクッと俯く
彼は尚更小さく丸まる

今年は雨を降らせられない
彼は勿論性欲も湧かない
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