不確かな存在3(風が起きるまで)/チャオ
言わない。その音はならない音だと、しっかり自覚しているのだから。
損得勘定で支配した経済グラフは、いつの間にか崩壊した。そのことに気がつかないで、無理強いを言えば、何とかなると思っている。もちろん、彼等には音は聞こえない。次第に広がっていく痛みにさえも気がつかない。屈強なのではなく、鈍感なのだ
痛みは誰かの胸の奥で、波になる。日差しの強い真夏の午後、誰かの胸で出来た波は、べとついたワイシャツを乾かすのに充分なだけの、風をふかしてくれる。
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