帰ってくる夏/岡部淳太郎
 
、ゆっくりと落ちてゆくような旅立ちでした。



いまはもういない妹と、生まれてこなかった弟のことを思い出して、やけに感傷的な夏になりました。いつも夏が来る度に、死者たちが帰ってくると言います。水に染まった死者と、渇きで喉が破れた死者と、それらの亡き者たちが、夏になると帰ってくると言います。ふるいしきたり、ささやかな信仰の一部であるのでしょう。ほら、見てください。私の弟が、生まれてこなかった私の弟が白い鳥になって、ふわふわと舞っています。その鳥の翼の周りで踊るようにきらきらと輝く光の結晶、夏の日差し生まれのその光は、もしかしたら、私の行ってしまった妹なのかもしれません。



帰ってくるよ
夏が帰ってくるよ
この火で埋められた季節に
死者たちが帰ってくるよ
夏は白くてどこまでも眩しいよ
帰ってくるよ
夏が帰ってくるよ
すべて白い
白すぎる夏だよ



(二〇〇五年八月)
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