雨/花
雨の日は嫌い
雨の音はあたしを寂しくさせる
目を瞑って 声も立てずに シーツに包まって
そして雨が止むのを待っている
雨の日は嫌い
雨の音は誰かが泣いているように思えるから
雨の日は嫌い
あなたに会えなくなるから
そう返事をしたあたしの髪を撫でながら
雨の日は好きだよ
雨の日はピアノを弾くんだ
雨の音が自分を強くさせてくれる
いつまでもいつまでも
雨音に負けないようにピアノを弾く
そう話したあなたの事を思い出す
あの日はとても晴れていて
雨の気配もなくて
それを少し残念に思いながら
あたしはあなたの指だけを見ていた
あたしの髪を肌を撫でるその指が
あたしの為に音を奏でてくれるのを待っていた
雨の日が待ち遠しくて仕方がなくて
それでもあなたに逢える事だけを待っていた
雨が降る
あたしの居場所にも
あなたの居場所にも
あたしはシーツに包まりながら
雨が止むのを待っている
音も立てずに息を潜めて
雨が止むのを待っている
もうピアノの音も聞こえない
あたしはまだ寂しいままだ
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