スピード/大覚アキラ
おれは
けものに
なりたいんだ
夜明け前の
海の匂いのする湿った空気に満ちた
まだ真っ暗な湾岸線を
イタリア生まれのスポーツカーよりも
もの凄いスピードで駆け抜ける
そんな
けものに
なりたいんだ
朝焼けが東の空を
墨黒からピンクがかった紫色への
緩やかなグラデーションに染めていくころ
徹夜の長距離トラックを
アクビしながら抜き去っていく
そんな
けものに
なりたいんだ
ジム・モリスンの朗読をBGMに
チューインガム頬張りながら
まるで稲妻みたいに
アスファルトに火花散らして
爪先で弧を描く
そんな
けものに
なりたいんだ
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