カバかもしれない/tonpekep
知らない
し
暑くもない
し
ちょっとだけ寒かったりする
あ
初めまして
わたしは
あれ
誰でしたっけ?
夏の果てに棲むという
或いは大きな口をひらけて
あれはカバかもしれない
大きな口の向こうに
見える
たいいく座りをした
鹿の仮面を被った
おじさんがいて
分度器で
かなしい気持ちの
角度を測っている
けど
21世紀のことはほんの少ししか知らない
し
そこに暮らしていいのかさえ
ときどき不安になったりする
し
吉野屋では
毎日
豚生姜焼き定食を食べ終えたら
分度器で
丼の斜面の
切なさを測ったりする
し
50円引き券と
430円を払い続ける日々が
ずっと夏を引き延ばしてくれればいいのに
夏の果てに棲むという
あれはカバかもしれない
し
バカかもしれない
生きていることを知るために
夏の夜
ぼくはパソコンの前で
レモンを嗅いでいる
し
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