可笑しな話/A道化
 




灯りを付けない夕刻の
人のいない部屋の沢山の影が
角からふやけて
海になってゆく、深い、暗い
海になってゆく


肺に溜まる海って
苦しいよね、でも
呼吸と引き換えだもの
しかたないよね


黙りこくった海が
扇風機に薄く千切られて
あ、そういえば私も千切れていて
でも既にバラバラだから
此処には誰もいないと思っていたんだ


完治って
難しいよね、でも
癒されることなんかなくてもジュースが飲みたくなるの
眠る前にはサプリメント齧ってしまうの


肺にいっぱいの海、深い、暗い、呼吸に混じるバラバラの海
そこに沈殿するバラバラのバラバラの私、それでも、時々
ジュースが飲みたくなるの、サプリメントを齧ってしまうの
嗚呼、もしかして、私まだ
まだ何かにすがりたいんだとしたら
すごく、可笑しいよね



2005.8.6.
戻る   Point(11)