しらやまさんのこと(6)/AB(なかほど)
竹竿の先に灯火をぶらさげて
小さな子から先にあぜ道を歩いて行く
ひと粒の米に
千もの神が宿っていた頃から続く火で
稲の葉を食べる虫を追い払う
のだと言うが
揺れる火はまるで
人魂のよう
とは
誰もが気付いていながら
誰も口には出さずに
そんなふうにして
僕も大人になったようで
虫送りの火は遠く
どこまでも遠く
なってゆきながら
いつかは
僕の魂も
その竹竿の先に
ぶらさがっているのかもしれない
喧嘩太鼓の音に
いくつもの魂がひとつになって
一際高い火柱になって
昇ってゆく
ひとつぐらいは
誰かの竹竿に
ぶらさがったままでもいいのに
虫送りの火は遠く
どこまでも遠く
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