だいだい色の童話集/佐々宝砂
 
雨がしとど降る夕方にさえ
その図書館は
虹のなないろよりも多くの色彩にあふれているのでした

花はバラ色
空は空色
木々は緑

図書館に住む少女たちは
童話の勇気ある少女のように
うたいながら
やらなきゃならないことを片づけてゆくのでした

山は草色
海は水色
夕焼けは金

わたしはわたしで
ねずみ色した椅子にすわって
まだ語られない生糸を
せっせとあつめて染めあげて
織物につむいでゆくのでした

わたしはまだおぼえていたのでした
わたしがやらなきゃならないことを

だいだい色の童話集に
書いてあるはずのこと
でもその本は
この世の図書館にないのでした





(初出 蘭の会2005.7月月例詩集「橙」)
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