母の物語/さち
必死に 必死に 走ったのよ
たぶん
本気じゃなかったんだろう
遊び半分だったんだろう
子ども二人 撃ち殺したところで
どうなるものというわけじゃない
戦争は
怖い
命を奪われることは 怖い
その上
戦争は
人の心を狂わせる
それが とても怖い
国に帰れば
善良な優しい人間であるかもしれない人が
もしかしたら薄笑いさえ浮かべていたかもしれない
その遊び半分の下で
蹴散らかされる虫けらのように
おたおたと逃げ惑う二人は
ほかの 何も持たず
自分の命だけ 必死に抱きしめて
どうにか生き延びた
それが 日常である という日々
飛行機の音がしたら
条件反射で逃げ出す
それが 日常である という日々
戦争は
怖い
あの日
もしも弾にあたっていたら
あなたは 今
ここに生まれていなかったのよ
〜言い訳〜
これって、詩じゃないかもしれない・・・。
現実に起きたことを書いただけ。
それでも、ここに持ってきたかったんです・・・。
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