なつのゆめ、だいて、はしって、○○○○○!/吉原 麻
 
キーを回す仕草で

カーラジオ口ずさむ曲は十年前ヒットした頃君とはいない

枝豆の塩加減なら君がして涙と汗でわからないから

食卓につくとき必ず眼鏡とる君の目の前わたしはいるのに

流し込むアルコールが落ちてゆくとき想いの何かも崩れ落ちてく

半ダースふたりであけたビールの缶潰す音だけ響く夏の夜

わかったと何度も頷く君はなぜその都度テレビのチャンネル変えるの

猫を抱くその優しさが羨ましいいっそ獣になってしまおう

首筋の虫刺されの痕掻きながら今日の暑さをくどく言う君

虫が鳴く雲動くもう夏が去るかすったままの熱さを置いて

一生涯一緒にいたいと思ったらそれから一年心に留める
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