夏の雪原/コトリ
おしげもなく 陽の光がふりそそいでいる
3月、真昼
白野原に反射して
レース越しの彼女の庭は
照明具よりずっとまぶしい
ああ、ぴったりの名前がやっとわかった
風がとまった 夏の雪原
とけだしてまろーんとなった雪には
きつねのあしあと
こどものあしおと
留守のあいだに ひとがしんだという はなし
両耳から いくつも
すっかりわすれてしまっていたことを
わすれていなければ
いま なにか が
考えないわけではなかった
でも わすれてしまうのだね
おなじこの陽の直線が幾重に交差していた
うす暗い うす明るい部屋で何度も
その先は
ああ わすれてしまうのだね
雪の庭を
はだしであるいた
彼女は
このやわらかい白い空間を 名付けたいとおもった
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