曲がって路地/吉岡孝次
白く沸き上がる夏の
密度
シャツをふるわす暴風のごとき若さよ
つややかな広葉樹を巻き込んで
青空はぐいぐいと強くなっていった
むなしく湿り気を含んだ黒土の畝に
投げ込まれた埃まみれの石の側面にさえ
知覚に溺れる日々の似姿を
鍛えられて後日 直視に至るとは葉書一枚ほどにも思わず
獣欲の調教もままならぬ制約と慰安から
いつか悪癖になじみきってしまった手のひらを
むせかえる逆光にうっとりとかざし
首筋をつたう心地よい敗北に酔い痴れてもみた
まぶたを閉じて眼が癒えるのを待つたび
そして再び今までの自分にたちかえるたび
渦巻く光量の焦点に迫る僕において僕は
紛れもなく子供だったとわかるだけだ
自虐の闇に潜り込むこと一つ取っても
熱に 背を押されるようにして
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