真夏の日々/チャオ
真昼の街は人ごみでしかなかった。通り過ぎる景色は人の頭だけだった。歩道へはみ出した看板には魅力を感じることも出来ず、トコトコ歩くほかなかった。
空の存在が異様に近く感じたのは、高々と建築されたコンクリート製の仕事場のせいだろう。それなのに、近く感じた空へ親しみを覚えはしなかった。
波と風がステップを取る海辺。遠くへ、遠くへ離れようとする意識。視界の表面にはくっきり写る高層ビルとうっすらと膜を張る荒々しい波を見た。限界に達した波は砕け、崩れ、白く分散し、砂浜へやってくる。
声と声が、沈黙に進入する。
駅の目の前、視線は階段で見上げる。投げ入れることしか出来ない空と、見出すことしか出来ない看板
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