祭りのあと/大覚アキラ
 
 経営していたデザイン事務所が潰れ、夜逃げ同然に実家に戻って来た。以来、年老いた両親に煙たがられながら家の中でゴロゴロするだけの毎日が、この二月ほど続いている。ここに転がり込んだのは梅雨の終りの頃だったが、季節はすっかり真夏になってしまった。

 筑前煮と豆腐の味噌汁という地味な夕食を終え、横になってテレビを眺めているうちにうたた寝してしまったらしい。喉が渇いて目が覚めた。テレビは消され、家の中は静まりかえっている。
 台所に行くと母がもたもたと食器を洗っていた。おれは、母がいま洗ったばかりのコップを手に取り、水を注いだ。蛇口から流れ落ちる水の音に混じって、どこからか祭囃子が聞こえる。
 
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