ニンゲン失格/大覚アキラ
 
と 不自然なまでのさりげなさを装って声を掛けてきたので

「死んだ妹のことを思い出したんです」そう答えると 女は

訊いてはいけないことを訊いてしまった という恥ずかしさのせいだろうか

頬を赤く染めて目を伏せ 小さな声で「ごめんなさい」と 呟いた

嘘だ 妹は死んでなんかいない それどころか おれには妹なんかいない

おれの頭の中で 女は ブラウスのボタンを ゆっくりと外しはじめていた





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