原石/アンテ
 

透明な原石が
こぼれ落ちる
けーたくんがわたしを呼ぶ
波がくり返し
膝や手にまとわりつく
原石を洗う
おへそが閉じて
お腹が急速に収縮して
服のなかに収まって
おしまい
もう熱は感じられない
けーたくんの手が原石を拾う
ゆっくりと持ち上げて
太陽に翳す

強い輝き
眩しすぎて
正視できない

掘っても掘っても
浜辺には小石が埋まっている
遠い昔は波に洗われていた証拠に
どれも角が取れて丸い
深く深く掘り進めば
いつか
キラキラ輝く透明な石が
見つかるかもしれない
ここに原石が偶然あった可能性は
ゼロじゃない
案外あちこちに
埋まっているのかもしれない

大きく振りかぶって
サイドスローで投げ出された原石
けーたくんの指を離れて
キラキラ光りながら
波間に呑まれる
なかったことになる
わたしは一人
波打ち際を歩きはじめる
けーたくんはしゃがみ込んで
小石を物色している
遠ざかる
遠ざかっていく


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