軽自動車に乗って/haniwa
 
さいから
お気に入りの音楽を爆音でかけて
高速道路には乗れないけれど
移り変わる町並みの中を走る

いくつものまっとうな車達とすれ違う
まっとうな車にはまっとうな人間が乗っていて
まっとうな人間は行き先をはっきりと知っている
でもたまにはまっとうなふりをした人間もいて
俺は隣でアクセルをふかしたりボリュームを上げたりする
まっとうなふりをした人間は苦笑して
俺に道をゆずる

夜は道端かパーキングで休む
ラジオをつけると知らない局が
知らない土地のことを話す
天気予報を聞きながらシートを倒す
少し開けた窓からは知らない土地の空気が流れ
俺は安心して目を閉じる

明日はどこへ行こうか


さてさて湿っぽい布団は
僕の背中をじくじく濡らすから
起きあがって駐車場に行き
軽自動車のエンジンをかける
僕はまっとうか?と僕は僕に問う
君はまっとうか?と僕は軽自動車に問う
答えは、たとえばシートに座って
ギアを一速に入れるまでわからない。
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