軽自動車に乗って/haniwa
 
軽自動車に乗って
旅に出ちゃった人がいて
その後の消息も不明だから
湿っぽい布団に寝転がりながら
その人のつもりになってみた


始まりは単純だった
ここには居たくない それだけ
友達とか女の子達とか大好きなんだけど
もう顔も見たくない それだけ

いつか母親が話してくれた
わたしのいとこのおじさんの何某
十五の時に家出して十年帰らなかった
帰ってきた翌年また消えて二度と帰らなかった
俺はもう二十二だけど
立派な人間になるつもりだったけど
何某さんが小さな声で囁きだした
だから軽自動車で旅に出る
俺の唯一の財産 八万キロの中古
マフラーに穴が開いてうるさい
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