雷子の居た夏/千月 話子
空の不思議な明るさを眺めていた
午後のしん とした静けさに
誰もが固唾を呑んで、音が止まるふりをする
脂汗を拭って、開け放った窓に手を掛けた
そろそろ雷子がやって来る
彼女はいつも俯いて、暗い顔をして玄関先に立っている
電話もメールも出来ない 雷子
いつも突然やって来て
「ごめんなさい、ごめんなさい・・」と泣いてばかりいるので
ほら、激しい雨が降って来た
「悪くないよ。」と その体を抱き締めてあげたいけれど
しっとり湿った髪や背中に触れようと 手を伸ばしたら・・
ドカン!!と稲光が走って
家の近くの大木に雷が落ちて
ビクついて
手も 出せやしない
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