空っぽになる/大覚アキラ
知り合いのレストランのオーナーシェフから聞いた話。
そのレストランの常連の客に、貿易関係の会社を経営するBさんという人がいた。Bさんには、もうじき小学校に入学する香奈ちゃんという娘さんがあり、たいそう可愛がっていたそうだ。月に一、二度はそのレストランに家族で夕食を食べにも来ていた。
ある時、Bさんが三ヵ月ほど店に姿を見せない期間が続いた。どうしたのかな、と気に掛けていた、そんなある日、夕方に店を開けてまもなくBさんがフラっとやってきた。テニスが趣味で、冬でも日焼けした肌と、快活な笑顔がトレードマークだったBさん。だが、久々に店に現われたBさんは、頬がこけ、すっかり憔悴した姿だった
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