秋のベランダに谺する 唖 唖/折釘
初冬というには、カーテンとレースと硝子の温度差の
循環もいまだ緩やかな隙間 立冬の日の深まりらしく
ベランダに出てみれば 秋のつつがない光
唖 唖 そうそろ落陽ですな
ええ 空もこう冷たい頃合ではなんとも
落ちるものが一際目に鮮々と、葉脈の筋目整う銀杏の樹
その世話役の気配が 佇んでいたので切っ掛けた声
世間話の後に 近づく低気圧の事など
色付きの遅さへの漠寂たる懸念は
死の立像が生命を育む所作によるものと
その支配下にあって 作法道理に原因を突けば
在らん限り どう問い立てましょうが
そう 愛とはもう異質の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)