秋のベランダに谺する 唖 唖/折釘
 
 初冬というには、カーテンとレースと硝子の温度差の
 循環もいまだ緩やかな隙間 立冬の日の深まりらしく
 ベランダに出てみれば 秋のつつがない光


  唖 唖 そうそろ落陽ですな

  ええ 空もこう冷たい頃合ではなんとも

 落ちるものが一際目に鮮々と、葉脈の筋目整う銀杏の樹
 その世話役の気配が 佇んでいたので切っ掛けた声
 世間話の後に 近づく低気圧の事など

 色付きの遅さへの漠寂たる懸念は
 死の立像が生命を育む所作によるものと
 その支配下にあって 作法道理に原因を突けば


  在らん限り どう問い立てましょうが

  そう 愛とはもう異質の
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